3

 ずっとなくしたとばかり思っていた携帯音楽プレイヤーがでてきた。せっかくなので充電して電源をいれてみると、当時好きだった、今はちょっとだけ古い曲が最新の顔をして上のほうに並んでいる。しかし、あまりにも最新然としているので、私がタイムスリップしたのかなと勘違いしそうになった。私は、そんな彼らが少し不憫で、アップデートは落ち着いたころに、また後日してあげようと思う。

 なけなしの小遣いで買ったプレイヤーは旧式もいいところだけど、それがまた味のあって、まだタッチパネルなんてなかったあの頃の、ボタンを押す感覚が心地よい。懐かしくって、無意味に画面をスクロールする。カチカチという確かな手応えは、当時の記憶を徐々に呼び戻す。

「いっしょにプレイリストなんかも作ったっけ。」

 そんな青臭い思い出のプレイリストには、選曲に合わせたぶっきらぼうな名前がついている。私とあの人が好きだった曲の入った「favorite」というプレイリストを再生してみると、甲高い女のヴォーカルが恋について、なんとも甘ったるい言葉を紡いでいく。こんなに女々しい歌を好きだったのは私ではなかったけれど、たぶん、絶対、私もこのバンドに心酔していた。

  イヤホンから流れてくる女の声が夕暮れのペーソスを歌う。ふと窓の外を見ると、夜の七時だというのにまだまだ明るくて、そういえば、このプレイヤーをなくしたのもこんな季節だったことを思い出す。あの頃は、公園のベンチで肩を並べているだけで幸せだったっけ。明るい時間が長ければ長いほど、もう帰ろうかなんて、悲しい提案をいつまでも引き延ばせてしまえる。もっともっと一緒にいさせてほしくて、神様にこの時間を止めてほしいと願った。時の止まった音楽プレイヤーは 、そんなあの頃の気持ちも留めていて、それを容赦なく耳から流し込んでくる。

 この曲を「favorite」のプレイリストに入れたのは私だ。片耳ずつイヤホンを分け合って、何度も聞いて、君の好きな歌が私の歌になった。確か、この歌は、「夏」のプレイリストにも私が入れた気がする。

 

youtu.be

 

 今週のお題「私の『夏うた』」